彼岸花の咲く頃に
昼が来る頃には、雨脚も強くなる。

天気雨だった天候は、完全に空が雲に飲み込まれる事で曇天と化した。

大粒の雨。

雨粒が地面を叩く音が大きくて、他の音は聞こえなくなる。

…この分じゃあ、今日は姫羅木さんも来ないかもな。

せっかく稲荷寿司も準備してあるというのに。

スーパーの入り口に立ち、両手を腰に当てて外の様子を眺めていると。

「……?」

気のせいだろうか。

向こうから人が近づいてくるのが見えたような気がした。

こんな大雨なのに?

視界が霞むほどの豪雨の中、目を凝らす。

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