彼岸花の咲く頃に
姫羅木さん以外に、稲荷寿司を欲しがる人がいるのか。

少し不思議に思いつつ、俺は彼女にパックの稲荷寿司を手渡した。

「お幾らかしら?」

「あ…198円です」

俺が告げると、彼女はタイトミニのポケットから198円ちょうど出した。

「よく降る雨ね」

その場で稲荷寿司のパックを開け、女性は一つ摘みながら店の外を見る。

「朝は天気良かったんじゃけどなぁ…」

思わず呟くと、彼女は俺の隣でクスリと笑った。

「ごめんなさいね」

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