彼岸花の咲く頃に
最近若い女性でも、神社仏閣巡りを趣味にする人が多いと聞く。

この女性もその類なんだろうか。

ぼんやりそんな事を考えていると。

「ご馳走様」

彼女はいつの間にか稲荷寿司を平らげていた。

空になったパックを店外のクズカゴに捨て、そのまま外へと歩き出す。

「あ、お客さん!」

まだ雨は降り続いている。

店でビニール傘を売っているので、それを勧めようとしたが。

「結構」

足を止め、彼女は振り向いて言った。

「こういう雨は嫌いじゃないのよ」

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