彼岸花の咲く頃に
とはいっても、好き嫌いとかいうレベルの降り方じゃない。

「濡れたままじゃあ風邪引いてしまうで、お客さん」

せめて雨が上がるまで。

そう言おうとした俺に。

「アッコよ」

彼女は薄く微笑んだ。

「『お客さん』じゃなくて、『アッコ』。また会う機会があるだろうから、今度はそう呼んでちょうだい」

その言葉を最後に、雨の中でびしょ濡れになる事を厭わず、彼女はそのまま山の方へと歩道を歩いていってしまった。

どこまでも風変わりな女性だ。

一体どこから来たんだろう?

姫羅木さんと同じく、この近くに住んでいる人間ではなさそうだった。

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