彼岸花の咲く頃に
アッコさんが去り、雨はまだ上がる気配を見せない。

…今日はもうお客さんは来ないかな。

姫羅木さんも本日は来そうにない。

店の奥に引っ込もうとして。

「?」

手の中で、ヂャリ…と音がした。

そうか…さっきアッコさんから受け取った、稲荷寿司の代金198円。

そう思って掌を開く。

と。

「え…」

俺は思わず目を丸くする。

手の中にあったのは小銭ではなく、幾つかの石ころだった。

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