彼岸花の咲く頃に
もう彼女の声は覚えた。

「姫羅木さんこんにちは。今日も稲荷寿司準備してあるけぇね」

入荷した品物のケースを運びながら、顔だけ入り口に向けて言うと。

「……」

姫羅木さんは立ち止まっていた。

入り口のところで身を硬くして、怪訝な顔で店内を見渡す。

普段緩々な彼女からはちょっと想像し難い、酷く警戒したような表情。

「…どうか…しちゃったですか?姫羅木さん…」

「千春…ちと訊ねるが…」

俺を見る姫羅木さんの視線は、あくまで鋭かった。

「昨日、この店に誰か来たか…?」

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