彼岸花の咲く頃に
その途端。

「!!」

彼女はあっという間に俺との間合いを詰め、片手で俺の着ているシャツの襟首を引っ掴んだ!

その拍子に俺の背中は陳列棚にぶつかり、並べてあった品物が、振動で床にバラバラと落ちた。

「ちょっ…姫羅木さん…?」

華奢で細腕の姫羅木さんに、こんなに腕力があるとは思わなかった。

普段緩みきって温厚とはいえ、やはり化け狐。

外見からは想像もつかないほどの怪力だ。

しかしそんな事より、俺には彼女がここまで激怒する理由が理解できなかった。

「な、何をそんなに怒っとってんですかぁっ…?」

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