彼岸花の咲く頃に
「たわけ」

姫羅木さんは若干強い口調で俺に言う。

怒るというよりは、たしなめるように。

「千春が昨日会ったというその女は、わらわと同じ狐じゃ。不用意に関わりおって」

「え…あ…」

その言葉に、驚きはなかった。

初めて化け狐に遭遇したのならばともかく、俺は既に姫羅木さんという『前例』を見ている。

だからアッコさんが何となく狐なのではないかと、予想ができたのだ。

だけど、彼女が狐だったら何故いけないのだろう。

別にアッコさんは、稲荷寿司の代金を騙した以外、俺に直接の危害は加えなかった。

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