彼岸花の咲く頃に
「ともかく」

姫羅木さんは向き直る。

「わらわがいない時にその狐と遭遇しても、迂闊な事はせぬ事じゃ。まぁ、尻尾四本のわらわの匂いが、千春にも染み付いておろうからの。余程尻尾の多い野狐でない限り、手出ししては来ぬとは思うが…」

化け狐同士の戦いは、尻尾の数で力量が決まる。

狐霊は、はじめ尻尾が一本しかないが、長い年月を掛けて妖力を増やし、それにより尾が裂けて1本ずつ増え、最終的には九本の尻尾を持つ『九尾の狐』となる。

故に九尾の狐とは、狐霊の最終形態とも捉える事ができる。

つまり、尾が多い狐ほど強い狐だと言える。

姫羅木さんの尻尾は四本。

九尾の狐ほどとはいかなくても、相当に強力な化け狐といえるのだろう。

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