彼岸花の咲く頃に
姫羅木さんはそんな俺を凝視した。

「よいか千春。この冬城近辺は、わらわが大昔から住んでおった土地じゃ。わらわが尻尾一本の仔狐じゃった頃からのぅ。それは即ち、ここら一帯はわらわの縄張りじゃという事じゃ」

「……」

迫力におされ、俺は無言のままコクコクと頷いた。

それはわかる。

俺だって生まれも育ちも冬城だ。

田舎で何もなくて不便な土地だけど、俺はこの冬城のノンビリ緩々とした雰囲気に愛着がある。

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