彼岸花の咲く頃に
「え?ああ、稲荷寿司!」

ダンボールの片付けもそこそこに、俺は立ち上がる。

「稲荷寿司はねぇ、お惣菜のコーナーに置いてあるんですよ」

年齢も一つか二つしか変わらない筈。

なのに俺はその女性に敬語を使っていた。

「惣菜…ほぅ、それは盲点じゃった」

理由はこれ。

彼女のこの言葉遣い。

自分の事を『わらわ』と呼び、どこか時代がかった言葉を使う。

まるで時代劇に出てくるお姫様のようだった。

お姫様に対して、平民は敬語。

当然だろう?

相手は位が上なんだから。

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