彼岸花の咲く頃に
「こんばんは」

何の前触れもなく、その黒ずくめの女はやってきた。

黒のセーターに黒のタイトミニ。

ショートカットの髪の毛が、夜気を孕んだ冷たい風に揺れる。

アッコさんだった。

実に数日振りの来店。

「……!」

彼女が野狐だという事は、姫羅木さんから聞かされている。

性質の悪い化け狐だという事も。

否が応にも緊張が高まる。

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