彼岸花の咲く頃に
そんな俺を見て、クスリと笑みを浮かべるアッコさん。

彼女は優雅な…しかし姫羅木さんとはまた違った足取りで店内に足を踏み入れる。

「いい夜ね」

「…ほーですね…」

警戒心は解かない。

解けない。

身を硬くしたまま、俺はアッコさんから視線をそらさない。

それをも意に介さないように。

「稲荷寿司が食べたいわ。あるかしら?」

彼女は笑みを絶やさないまま言う。

「……」

チラリと、惣菜のコーナーに視線を移す。

「あー…すいません…今日は稲荷寿司、売り切れてしもうたんですよ…」

声を出すと、緊張のせいか少しかすれていた。

「あらそう…残念…それは…」

呟くアッコさん。

その口端が釣り上がる。

「『お稲荷様』に売ったせいかしら?」

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