彼岸花の咲く頃に
足早に惣菜コーナーに案内する間も、彼女は悠然と歩いていた。

形容するなら、『しゃなり、しゃなり』といった感じ。

身につけているのは白いセーターと同色のロングスカート。

初秋の出で立ちとしては少々暖か過ぎるような気もするけど、まぁ普通の洋服だ。

でも、歩いている雰囲気は、艶やかな着物を身につけたお姫様のそれ。

初めて出会うタイプの人種だった。

こんな人に、お惣菜の稲荷寿司なんて勧めていいものだろうか。

しかし。

「おお、あるではないか、稲荷寿司」

陳列されたパックの稲荷寿司を見ると、彼女は喜んで手に取った。

そしてレジにも通さないうちから、パックの包装のラップを指先で破り、中の稲荷寿司を一つ、摘んでパクリ。

モシャモシャと美味そうに頬張った。

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