彼岸花の咲く頃に
意識が落ちる寸前。

「ひめ…ら…ぎ…さ…」

かすれた声で、呟いてみる。

その声が届いたのか、届かなかったのか。

彼女は今もアスファルトに横たわったまま。

こちらに視線を向ける事すらしなかった。

我が身惜しさに死んだふりでもしているのか。

だとしたら、俺は…姫羅木さんを軽蔑せずにはいられない。

「あははははははっ!」

悪狐の高笑いが、やけに耳に残った。

「失望しなさい!絶望しなさい!希望を失った人間の表情っていうのは、いつ見ても滑稽で可笑しいわ!あはははははははっ!」

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