彼岸花の咲く頃に
全く動きが見えない悪狐の尾。

その尾が九本全て、俺に鎌首をもたげた。

俺はゴクリと血の味のする唾を飲む。

駄目だ、これは無理だ。

回避する事もできない尾が九本、全て俺を狙ってくる。

命中した箇所は全て骨が砕かれる。

いや、『串刺しの刑』と悪狐が宣言したのだから、貫通するのだろう。

「おとなしくなったわね。でももう手遅れ」

情け容赦など微塵もなく、悪狐は九尾を走らせる!

「せいぜい阿鼻叫喚で私を楽しませてちょうだい」

空気をつんざく音と共に接近してくる九尾。

俺は棒立ちのまま、貫かれるしかない。

しかし、その瞬間。

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