彼岸花の咲く頃に
その速度は、目を見張るものだった。

俺に放った尻尾の速度も、相当なものだったのだろう。

何せ肉眼では捉えきれないほどの速度だったのだから。

だが、姫羅木さんに対して放った尻尾は、あまりの速度に空気との摩擦が生じ、炎を発生させる!

炎を帯び、まるで火龍の如き姿となった尻尾が、うねり、渦巻き、鎌首をもたげて姫羅木さんを襲う!

しかし!

「笑止」

次の瞬間、俺と悪狐は目を疑う。

炎に包まれた凶悪極まりない悪狐の尾が、姫羅木さんの白くしなやかで美しい毛並みに覆われた尾によって、全て打ち落とされたのだ。

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