丸腰デパート・イケメン保安課
「御手洗さんは、イギリスに住んでいらっしゃるんですね」
「はい、かれこれ100年…」
「…………」

「…さっき7年と言ってましたよね?」
「ほほほ…年寄りは物忘れが…ゲホッ!グホッ!」
白々しく咳込んでるし!

いくら忘れても100年はないだろ?
とんだけ激しく忘れてんだよ!

「8年前に妻の笑子が先立った事で、イギリスに住む息子が一緒にと言ってくれまして」

親孝行な息子だなぁ。
老人ホームの入居待ちがある時代なのに。
家族と一緒が1番いいに決まってるもん。

御手洗さん、こうして普通に話す事もできるじゃない!
かわいいおじぃさんじゃん。ねぇ?

「奥様は笑子さん、息子さんは何てお名前なんですか?」
「ワタクシの息子はローレンスと言いまして…」
「…待って下さい」

ローレンス?

「なぜ日本人のご両親からローレンス?」
「…………」

御手洗さんは無言、手に持っていたシルクハットを深く被った。
「世界は誠に…摩訶不思議でございますねぇ」
遠い目だよっ!!

摩訶不思議って…あなたの息子の名前こそ不思議ですから!

ああっ!高齢な老人だけに勢い良く突っ込めないぃぃ―――!!
何かスッキリしないんだけどっ!
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