丸腰デパート・イケメン保安課
「はっ!予想通りだな!」
閉じられた門を拳で叩き、更科は舌打ちした。

政治家の息子だ…分かっていた事ではあるが。

「どうする?東」
「任意がダメなら証拠を探すまで!」
「証拠ねぇ…」

更科は呟き、無精ヒゲの生えた顎を撫でる。
「…髪の毛一本手に入ればな…残されている体液とのDNA鑑定に引っ張れるんだが」

「それだぁっ!!」
叫ぶ笙。
「髪の毛を手に入れる!」
「はぁ?どこで?」

門前払いをくらったばかりなのに。

「予備校!」
「予備校…ああ、落ちてるのを探すのか?」
「違う!予備校で張りわしづかみで握る!」
「キャンディ掴み取りじゃねぇぞ?!…任意で本人から提供してもらうか、自宅内から出ない限り、納得される証拠にはならないが?」
「でも、黒岩に絞りたい気持ちもあるんです」
「絞り込みか」

でもまぁ、アテは外れではないなと更科は笑った。


予備校で張った二人は、黒岩一紀の髪の毛を手に入れる事に成功した。

取ったのは、わしづかみ希望の笙ではなく、ゴミを取ってやる親切を装い近付いた更科の方であったが。

鑑識に調査を依頼し、二人は署内のデスクに戻った。
「鑑識待ち遠しいな!」
「急いては事を仕損じるぞ?」
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