丸腰デパート・イケメン保安課
デスクに両足を乗せ、更科は煙草に火を付けた。

「しかしお前、ずいぶん頑張るじゃねぇか」
当然です!と、笙は鼻息を荒くした。

「香奈ちゃん、黒岩一紀の写真見た時怯えてたじゃないですか?早く安心させてやりたいんです」

似顔絵に似た黒岩の写真を香奈に見せた時、香奈は震えていた。
それでも写真から目をそらさずに、はっきりと黒岩が犯人だと笙に伝えてくれた。
その勇気を無駄にしたくない。

「まぁなぁ…でも香奈ちゃんトコも大変だな?父親がやってる工場、経営危ないらしい」
「え?」
その情報に、笙は眉をひそめて更科を見た。
「聞き込みで聞いたんだ」
「そうなんだ…」
父親が経営している工場が危ない上に、香奈ちゃんまであんな目に会って…。

「ならせめて、犯人くらい捕まえてやりてぇよな」
香奈ちゃんと家族の為になと笑う更科に、笙は無言でうなづいた。


そんな事を話した二日後、更科と笙は窮地に立たされる事になる。






「更科、東、話がある」

朝、捜査に出ようとした更科と笙に、課長が声をかけてきた。

「話ですか?」
「署長室だ、一緒に来い」
「署長室ぅ?」
更科は顔をしかめつつ立ち上がり、課長を睨み付けた。
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