丸腰デパート・イケメン保安課
「署長が何の話で?ボーナスでも上げてくれるんすかねぇ?」
「軽口を叩くな」

舌打ちをした課長は、黙ってついて来いと顎で指図した。

何だ?と目を見合わせ、二人は課長の後に続き、署長室へと向かった。




「はぁっ?!何だって?!」
署長からの話を聞いた二人は、ふざけるなといいたげに署長へと詰め寄った。

「何言ってるかわかんねぇ!」
「俺もです!全く理解できません!」

詰め寄られた署長は、ため息をついて薄くなった頭を撫でた。
「わからんのかね」

署長からの話とは、香奈の事件の容疑者、黒岩一紀には近付くなと言う話であったのだ。

つまり、犯人を逮捕するなと言う事だ。

「本庁に黒岩氏から苦情があった。君達は、ずいぶん強引な捜査で黒岩氏の御子息を犯人の様に仕立て上げようとしているらしいな」
「任意同行求めただけっすよ?!」
「被害者の供述でも、黒岩一紀が容疑者であるという確証が…」
「それが強引だと言うんだ!」

二人の勢いを妨げるかの様に、署長は拳でデスクを叩いた。

「とにかく、苦情が出ている以上、君達には捜査から外れてもらう」

課長の言葉に、笙は眉をひそめた。
「言い掛かりです!納得できません!」
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