丸腰デパート・イケメン保安課
更科の言葉に、父親の肩がビクリと動いた。

「…不渡りなんて…誰がそんな…」
力無い声で吐き、握りしめた拳を更に強く握る父親…。

更科は悟った。

政治家の権力が、先手を打ってきた事を。






「…どうしてだ!何で急に逮捕を望まないなんて!」

事件現場の公園のベンチの前、笙は右往左往に歩きながら悔しそうに舌打ちをした。

ベンチに身体を預け煙草に火を付けた更科は、煙を吐き出しながら晴れた空を見上げた。

「わかんねぇか?」
「全くわかりません!」
地面を蹴りだした笙に、更科は説明をする。

「米田さんとこの工場、不渡り出したんだよ」
「それが事件と関係が?それに否定していたじゃないですか」
「否定せざるを得ないんだよ。不渡り分を払った金は、俺達には言えねぇトコから出てるからな」
「言えない金って?」

まだわからない笙に、更科はため息をついて見せた。
「示談金とでも言うかな」
「示談…事件の示談金…?!」
そうだと更科はうなづいた。

「黒岩が先手を打ったんだ。金をやるから事件を忘れろ…ってな」
「……それは…香奈ちゃんの両親が…金で…香奈ちゃんの犯人逮捕の想いを…売ったって事…で?」
「……そうだ」
< 167 / 382 >

この作品をシェア

pagetop