丸腰デパート・イケメン保安課
「払うんです!間違ってる!金で事件を忘れろなんて!」

「……払うって…お前がか?」
「払いますよ!一千万でも二千万でも!それで香奈ちゃんが安心できるなら…」
「―っ!馬鹿かっ!!」


更科の怒号に笙は動きを止めた。
うづくまっていた上半身を起こし、更科を見上げた。

「払って何になるんだよ!!金の問題じゃねぇんだろ?!お前…黒岩と同じ事すんのかよ!」
「……でも…このままなんてひどいじゃないですか…香奈ちゃん…いい子なのに…悔しいですよ…」

泣き出しそうな笙を見下ろし、更科はため息をついた。

「馬鹿野郎…俺だって悔しいに決まってんだろ…」

だからと言って、組織の末端の自分達に何ができるだろうか。
できる事と言えば、黒岩が金を渡した証拠を掴む事。
たとえ鑑識からのDNA鑑定結果が黒と出ても、上に握り潰されるに決まっているのだ。

それに今は、黒岩の目がある。
うかつに動けば、身動きが取れなくなる。


「東…今は、署に戻るぞ」

時期を待とう。

更科は唇を噛み締めた。





しかし、一番望まない結末が二人を待っていたのだ。
< 169 / 382 >

この作品をシェア

pagetop