丸腰デパート・イケメン保安課
「綾美!ポジティブ精神!」
主任は慰めてるのか、肩を叩いてきたし。

…蹴ったろか?



ボーン…ボーン…。


突然、柱時計の様な音が響いてきた。
「合図だ」
栗田さんが呟く。

何の合図?


『良い子のみんなぁ――!こ〜んに〜ちわぁ〜!!』

「何?!」

場違いなくらいのテンションの高い声が響いてきた!
まるで、NHKの幼児番組の様な…。

主任が、にやりと笑う。
「来たな、キツネ野郎が」

キツネ?


途端、私達の目の前に白い煙が湧き出てきた!

『歯磨きはちゃんとしてるかなぁ〜?』
「きゃああああっっ!!」

煙が消え、中から出て来たのは…ワイシャツにネクタイ、赤い法被を着た二足歩行の…キツネだあぁっ!


「妖怪!?!」
「違うよ、桜田ちゃん。あのキツネは妖怪じゃなくて本田くん」
「本田って誰?!」
キツネの中身?!
「キツネの名前なんだよ」
やっぱキツネじゃん!

やばい!異空間に入ってる!
いや、最初からそうだとは感じてたけどさっ!

妖怪はないだろ?!


私は掃除しに来ただけなのにぃ――!!


「落ち着け、綾美」
落ち着いていられるか!
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