丸腰デパート・イケメン保安課
意地悪だよ、主任。


私……何にも言えないんだよ。


元旦、主任の気持ちに対して曖昧な返答しかできなかった私に、何も言える訳ないじゃん!

行かないでなんて、保安課に居てなんて言える訳ないじゃん!


アメリカに行ったら、何年後に帰国できるかわからない主任。

もしかしたら、ずっと戻って来れないかもしれない。

主任が居ないと淋しい、静かすぎて、物足りないから…。

だから保安課に居て、なんて。


自分勝手だよね。


こんな中途半端で曖昧で、勝手な自分が主任に何を言える?


主任の想いを、もてあぞぶだけだ。




「………主任…バイバイ」


私は、笑って見せた。

ホントはつらい…言いたくない言葉だけど……。


「バイバイ、主任」


私の言葉に、主任は数回瞬きをした。



「ああ」

そうだなって呟いて、主任は小さく笑った。



瞳を細めて、綺麗な顔を笑顔で崩して……。




「バイバイ、綾美!」


うん、バイバイ……。



…元気でね。

アメリカ行っても、変わらないでね?

めちゃくちゃな主任で居てね?




バイバイ……主任。
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