丸腰デパート・イケメン保安課
2ヶ月、何事も無く普通に過ごしてる。

静かなエアコンの可動音を聞きながら、私はぼんやりとしていた。


新しいエアコン。
主任が、掃除をしようとして分解してしまったから買い替えたんだ。
「説明書が悪い!」
販売元のせいにしてた。

ベランダ前の窓、観葉植物を飾ってある椅子の脚も一本折れてる。
主任が乗って壊したんだ。人が乗る耐荷は無い物なのに。
「根性の無いやつだ!」
椅子のせいにしてた。


コップや皿もいくつ割ったか知れない。

何かやるたびに、何かを壊すんだ。
で、責任転嫁。

どうしようもないよね?

思い出して笑った。

笑いながら、主任の部屋のドアを見つめた。


Tシャツにスウェット姿、ボサボサの頭を掻きながら出て来る主任が見えるんだ。

毎朝……。



ドアの前に立ち、そっと開いた。


主任の部屋。
整理された部屋。

隅に積み重ねられた数個の段ボール、何も入っていないクローゼット、綺麗に整えられたベッド。


それは、この部屋の住人が居ない光景で、それを思い知るだけの光景で。


生活感の無い部屋の真ん中、崩れる様に座り込んで……気付いたら……。


私は泣いてた。
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