丸腰デパート・イケメン保安課
静かに流れる曲はわからないものだけど、それはどこか懐かしくて…昔から聞いていた様な感覚さえあった。


「笙にしては、かなりセンスある土産ですね」
「……そうですね」
「探したんでしょうね」
「うん…」
「僕達の土産とは違いますね」
「そうなんですか?」
「ええ、全く違います」

ですから、と家紋さんは言葉を続けた。


「桜田さんは、泣いてもいいと思いますよ?」

え……?


顔を上げる私に、家紋さんは笑った。

「あんな男ですけど、桜田さんに対しては真剣ですから。それを受け入れるかどうかは桜田さんの気持ちが優先です。だから、桜田さんは泣いてもいいんです」

「……………」


家紋さんは多分、わかっているんだ。

家紋さんだけじゃなくて、保安課のみんなは、私よりも先にわかっていたんだ。

理解して、何も言わず、ただ見ていてくれた。


気付かなかったのは私だけだったんだ。



「――ふっ…う…うわぁぁぁっ」


泣いた……声を上げて泣いた。

主任からのお土産を抱きしめて。


「大丈夫、大丈夫ですよ」

家紋さんの手が、丸めた背中を撫でてくれる。



私は久しぶりに声を上げて……2ヶ月分は泣いた。
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