丸腰デパート・イケメン保安課
主任の瞳がまっすぐで、射抜かれたみたいに胸が痛くなったんだ。

「綾美」
「…はい?」

こっちまで緊張してくるよ!



「綾美、刑事の妻になってくれ」



へ……?

刑事の、妻?

って………。



「アメリカへ行くと決めた時、綾美は綾美で幸せになるのがいいんだろうと考えた」
「……主任」
「だがな、考えまいとすればする程、綾美が浮かんでくるんだ。この辺にな」

言いながら主任は頭上を指差す。

…私はマンガのセリフの吹き出しか?


「今の俺には何も無い。一から自分の力で生きて行く…綾美についてきて欲しいんだ。刑事の妻に永久就職する気はないか?」


心臓が耳の中にあるみたいに、私はドキドキしてた。

主任からのプロポーズは嫌って程されてたけど、今みたいにドキドキはしなかった。

今までとは違う気がするんだ。


それは、私の気持ちが違うから。



「就職…刑事の妻…」
「ついて来てくれるか?綾美」


あれほど拒否ってた主任との結婚。
有り得ないって、普通がいいからって突っぱねてた。

でもホントは、普通とか普通じゃないとか、そういう基準じゃないんだよね?


私の気持ち次第…なんだね。
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