臆病者の逃走劇


「…な、何?誰かに用事?」




それ以上、こないで。

何にも、触れないで。


そう必死に願いながら声をかける。


用事だと言って。

私以外の誰かに用事だって。

そしていないんだって、諦めて帰って。


切実にそう願いながら、東条くんを見る。



「お前に、用事」



そんな私の願いを、東条くんは淡々とした声で、あっさり打ち砕いた。



 
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