臆病者の逃走劇


「はっ……はあ…」



極度に緊張していたせいか、息が乱れる。

東条くんは突き放された距離のまま、俯いて黙っている。


…なんで。


分からないことだらけで、切なくなる。



「どうして…こんな…」

「………」

「どうして何も、言ってくれないの…?」



どうして黙っているの。

何も分からなくて、切ないよ。苦しいよ。


…だけどいつまでも真実を怯えて知ろうとしない私が、こんなことを思うことがおかしいことも…分かってる。

結局私はどうしたいんだろう。


同じように黙り込んだ私に、東条くんは俯いたまま、呟いた。



「…言ったじゃねぇか」

「……え…」

「言ったのに…何も言わずに逃げたのはお前じゃねぇか…!」



あまりにも図星をついたその言葉が

私の心を突き刺した。



 
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