マイノリティー・レポート
三つ目は、MADE IN KOREA

洋服のタグを探ってみてもどれも、コリア、インデァ、USAと書いてあった。
僕は「MADE IN JAPAN」と書かれた日本製を探したがどこにもなかった。
大抵は「MADE IN KOREA」と書かれていた。

僕はなかなか見つからない日本製の洋服をそれだけ貴重な洋服だと考えた。

そのころの日本は崩れていたイメージを僕はもっていた。

ニュースで伝えられることも学校で教わることも、日本の雨で頭がハゲて、日本の魚で手足が痺れてしまうこと。
町の中でもダンプカーが大地をゆらし、玄関先で黒い革製のカバンをもって魔法使いのようにいろんなものを売っていた。
目を閉じて目を明ければ、山が消え、次の瞬間には新しい家が建つ。
みんな食品添加物で育って、みんな病院で長生きする。

まるで魔法だ。

メイド・イン・ジャパン…

メイド・イン・ジャパン…

滅びゆくために貴重なメイド・イン・ジャパン。

僕は壮思っていた。

僕が洋服売り場の更衣室の鏡で遊んでいると母が迎えにきてくれた。

「どれにするの?」と母はあれこれ僕にあうサイズを探しながら聞いていた。

僕はカチンときた。

「どれを着ても一緒だよ、どこにもないたった一軒しかない洋服屋さんで服を買わなきゃ!ここの服ならいらない。まだこのジャージ着れるよ。」

僕はさっさと母の手をひいてエスカレーターを下った。

「こんな世の中で屈折した不安を抱いていたマイノリティ・レポートは、僕だけのことだろうか?」
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