愛してると言えなくて…
◇ここから始まる…◆
「尚っ」
後ろから声がする
「お母さん!」
家を出たばかりの尚の背後には尚の母親がいた
「尚っお弁当。忘れてる」
母は尚の目の前にお弁当を差し出した
「あっごめん忘れてた」
尚はそう言って舌をペロリと出してみた
「もう!アンタもう中学生でしょう。もう少ししっかりしなさい」
尚のおでこをピンとはじいた
「いったぁぁ~い!もう行ってきますぅ」
少し反抗的に尚は言うと道を歩き始めた
アスファルトと靴がコツコツと鳴る
しゃんと上を向いてみる
青い空は透明なブルーに澄み渡っていて…
『中学生』という者にまだ慣れていないが考えるだけで少し尚の顔は綻んだ
「なぁ~おっ」
悠吾が後ろからかけて来た
「悠吾!」
尚がそう言うと悠吾は少し笑った
「何楽しそうにしてんの?」
悠吾は眠たそうに目をこする
「ううんな~んにも」
尚はわざと楽しそうに言った
差ほどいい事なんて無かったけど
「ははっ。尚はいつも楽しそうだな」
「へへっそうかな」
悠吾と尚はお互い笑いあった
桜東中学校に入学してから一週間
尚はだいぶ悠吾との通学に慣れたところだ
新しい友達も数人出来て、勉強も今の所楽しい
悠吾とは運良く同じクラスになった
「担任の森永先生面白いよねぇ」
「あぁ、『で、あるからして~』だろ」
悠吾は担任でもあり数学の先生でもある森永先生の真似をした
「きゃはは。似てるぅ」
「ホント?」
こんな会話も全部付き合っている振りをするため
いまでは二人の噂はかなりの速さで一年生に広まっている