夏恋



「手離せよ」



俊哉!?



とても低く響いたその声は、誰の声かわからないほど怒りに満ちていた。






俊哉であってほしい





そう願いながら見上げれば、そこにいたのは俊哉ではなくあのお客さんだった…――――













男が割り込んできたことで諦めたのか、先ほどの男たちは気付けばいなくなっていた。






「大丈夫?」


力が抜けて座り込んでしまった私に、彼は優しく手を差しのべる。





やっとの思いで掴んだその手は、俊哉とは違うごつごつとした男の手で、私はこんな状況にも関わらず赤くなってしまったのを覚えている。




< 8 / 14 >

この作品をシェア

pagetop