夏恋
「手離せよ」
俊哉!?
とても低く響いたその声は、誰の声かわからないほど怒りに満ちていた。
俊哉であってほしい
そう願いながら見上げれば、そこにいたのは俊哉ではなくあのお客さんだった…――――
男が割り込んできたことで諦めたのか、先ほどの男たちは気付けばいなくなっていた。
「大丈夫?」
力が抜けて座り込んでしまった私に、彼は優しく手を差しのべる。
やっとの思いで掴んだその手は、俊哉とは違うごつごつとした男の手で、私はこんな状況にも関わらず赤くなってしまったのを覚えている。