約束-promise memory-
"どうしたいの?"
「ど、どうしたいって、それは……」
壱と笑顔で話したい。
壱とまた楽しく過ごしたい。
壱とまた、一緒に居たい。
「私はまだきっと、その人のことを大切に想ってる。だから、その人がいいなら、また一緒に居たい。また一緒過ごし……」
「やめてよ」
「……え」
突然、柏木君が低い声で私の話を止めた。
「柏木……君?」
「あのさ、一ついいかな?」
「な、なに?」
「その人、何で居なくなったわけ?」
「それは私にも分からなくて。突然、だったから」
「そんな人の事まだ想ってるわけ?」
「それは……」
「っていうかさ、捨てられた……とか、考えなかったわけ?」
「捨て……られた」
「きっと、南沢さんがまだ想ってるって知ったらその人、呆れるんじゃない?」
「……」
「別にどうでもよくなったから、離れる時も何も言わなかったんじゃない?それなのにまだ想ってるって……それって重いよ。まぁ俺の意見だけど」
考えもしなかった。
"壱は私たちのことはどうでもよくなった"
そんな事、考えもしなかったよ。
そう考えたら、自然と涙が出てきた。
柏木君は、ズボンのポケットに手を突っ込んで、木にもたれかかったまま、黙っていた。
私のところは、一度も見ない。