約束-promise memory-
-凛 side-
柏木君が壱。
私がずっと、探してた人。
やっぱり、壱だったんだ。
忘れるわけはない。
私が間違えるはずがない。
塁が何で知ってたかって事よりも、壱が今私の目の前にいる事が、何よりも私の感情を揺さぶった。
「壱……なんだね」
私は彼の名前を呼んだ。
だけど壱は、私の事を見よともしない。
ずっと顔を横に向けたまま。
「あなたはもう捨てられたの。気安く壱の名前呼ばないで」
若菜さんがそう言った。
「じゃ……さっき言った事は、壱が自分でそう思ってるから言ったの?」
さっきの言葉。
"その人、あんたと離れたいから居なくなったんじゃないの"
あれは、柏木君の意見ではなく、壱そのものの答えだったの?
「ああ。そうだよ……凛」
やっと私を見て話してくれたその言葉が、私の胸に突き刺さった。
5年ぶりに呼ばれた名前の音がすごく、悲しい音色だった。