約束-promise memory-
-凛 side-
塁には何でも見抜かれる。
本当は、声を出して泣きたいし、言いたい事もいっぱいある。
だけど、壱に捨てられたからって、塁に頼るのは、都合よすぎ。
だってこの5年間、塁は私を心配して、彼女だって作らなければ、恋愛をしようとしない。
塁は「俺は興味ないだけだから」と言っていつも流される。
そんな塁の優しさに、私はいつも頼ってばかり。
だからもう、泣きたくない。塁の前では。
なんて思ってたけど、何でいつもこうなっちゃうんだろう。
塁の暖かい身体が私を包んだ。
「る、塁……」
「何今更強がってんだよ」
「……私は……」
「言っとくけどな、お前の涙なんて腐るほど見てきたんだよ。今更泣けないなんて思ってんじゃねーぞ……バカ」
塁のその言葉はすごく優しくて、私の涙腺をさらに緩めた。
「人間にはな、喜怒哀楽の感情があるんだよ。嬉しい時は喜んで、ムカつく時は怒って、哀しい時は泣いて、面白かったら楽しんで……そういう特権を持ってんだよ」
「……う…ん」
「お前今、哀しいんだろ?」
私はゆっくり、首を縦におろした。
「じゃ泣けよ。……その為に居るんだから、俺は。」
「う…んッ……」
「俺、さっきも言ったけど、辛くなったら言えよ。ずっと俺がお前のそばに居てやるから」
塁の抱きしめる腕が、強くなっていった。