約束-promise memory-





-凛 side-




塁には何でも見抜かれる。


本当は、声を出して泣きたいし、言いたい事もいっぱいある。


だけど、壱に捨てられたからって、塁に頼るのは、都合よすぎ。


だってこの5年間、塁は私を心配して、彼女だって作らなければ、恋愛をしようとしない。


塁は「俺は興味ないだけだから」と言っていつも流される。


そんな塁の優しさに、私はいつも頼ってばかり。


だからもう、泣きたくない。塁の前では。


なんて思ってたけど、何でいつもこうなっちゃうんだろう。




塁の暖かい身体が私を包んだ。




「る、塁……」


「何今更強がってんだよ」


「……私は……」


「言っとくけどな、お前の涙なんて腐るほど見てきたんだよ。今更泣けないなんて思ってんじゃねーぞ……バカ」




塁のその言葉はすごく優しくて、私の涙腺をさらに緩めた。




「人間にはな、喜怒哀楽の感情があるんだよ。嬉しい時は喜んで、ムカつく時は怒って、哀しい時は泣いて、面白かったら楽しんで……そういう特権を持ってんだよ」


「……う…ん」


「お前今、哀しいんだろ?」



私はゆっくり、首を縦におろした。



「じゃ泣けよ。……その為に居るんだから、俺は。」


「う…んッ……」


「俺、さっきも言ったけど、辛くなったら言えよ。ずっと俺がお前のそばに居てやるから」



塁の抱きしめる腕が、強くなっていった。







< 118 / 309 >

この作品をシェア

pagetop