約束-promise memory-
-塁 side-
「ただいま」
「お帰り塁」
家に帰ると、すでに親父の姿があった。
「今日早いね、親父」
「まぁな」
「どうしたんだよ?辛気くさい顔して」
普段明るい親父が、今日はやけに静かだった。
「今日会社で、ちょっとした話を聞いてな」
「ちょっとした話?」
まぁ会社の人に聞いた話なんて、俺には全く興味なかった。
「まぁ何があったか知らないけど、あんま落ち込むなよ、親父」
そう言って俺は、リビングを出ようとした。
「あのなぁ、塁」
「何?」
親父が俺を呼び止めた。
「壱君のお父さんが亡くなった話知ってるか?」
「ああ。兄貴から聞いたけど?」
「そっか…お前はもう知ってたんだな。保科さん、幸せそうだったのにな…なんで自殺なんか」
は?
ちょっと待て。
俺は鳥肌がたつほど寒気がした。
「……自殺?自殺ってどういう事だよ親父」
「何だお前、知ってたんじゃないのか?」
「亡くなった原因までは知らなかったんだよ!親父が会社で聞いた話ってそれ?」
「ああ」
俺は親父の向かいの椅子に座り、「聞かせてよその話」と、親父から壱の親父さんの全てを聞いた。