約束-promise memory-
-涼 side-
茜は、柏木の背中をずっと眺めていた。
そんな茜の背中に、俺は話かけた。
「柏木の気持ち、少し分かる」
「え?どういう事よそれ」
茜は俺のところに振り返り、納得のいかない表情で俺を見た。
「塁も言ってただろ?柏木は凛々の事をまだ想ってるって」
「なら何であんな事」
「裏切ってしまったから。塁の話を聞く限り、柏木は凛々達を好意で裏切ったように俺は思えない」
「涼」
「凛々を冷たく突き放すのも、柏木にとっては、相当辛い事なのかもしれない」
茜は何も言わず、柏木が歩いた方向をもう一度見た。
「それでも柏木は、凛々の幸せを見守りたくて、ここに来たんだ。俺は好きな人を裏切ったりは絶対しないけど、例えば、好きな人が俺を好きでなくてもせめて近くで、その人の幸せを見守りたいと思う」
「さすが同じ男だね。私は柏木君の気持ちがわからない」
「俺は、例え茜が誰を好きでも、近くで見守りたいと思う」
こんな時に何言ってんだって自分でも思うけど、凛々や柏木を見てたら、今俺の想いを伝えたくなった。
自分の気持ちを自由に伝えられる事って、どんだけ幸せかって事がわかった。
柏木みたいに、自分の気持ちを言えない奴だっているんだ。