約束-promise memory-
俺は、再び凛から目を逸らした。
「ダメ…かな?」
「俺は、凛や塁を裏切ったんだぞ」
そう、裏切ったんだ。
「……壱は優しいから、私は裏切られたとは思っていない」
「え?」
この俺の行動を「裏切り」以外に何を思う、凛。
「壱は、別に好きな人が出来て、私は振られた。ただそれだけの事なんだよね?」
"ただそれだけの事"
「私は、壱がまた戻って来てくれただけで嬉しいから」
凛は、俺に笑顔を向けた。
俺は、その笑顔に吸い込まれそうになった。
もう全てが壊れてもいい。
母さんや親父、若菜の事なんて考えたくない。
凛と二人で生きていけるなら、俺は何もいらないし、何も怖くない。
凛の笑顔をみたら、そう思った。
だから俺は、自分でも無意識に、凛へ手を伸ばした。
「壱……?」
凛の髪に手が触れそうになった時。
「りーん!!」
凛を誰かが呼んだ。
俺の手は、また寸前で止まった。