約束-promise memory-





「別に弱気になんかなってない!ただ俺は…っ!」



"ドサッ!!!"



「塁!!」


俺らの様子に気付いた涼と新が駆け寄ってきた。



俺は、壱を殴った。

2度目だな。




「俺が羨ましいだ?ふざけんなよ!」


「塁!」



倒れる壱に向かって行こうとしたけど、涼達に止められた。




「この際俺もはっきり言うけど、俺はお前が羨ましかったんだよ壱!」


「……」



俺は、涼達が抑える中で、叫んだ。




「ガキの頃から、凛はお前ばっかり見てんだよ!俺だって凛が好きだったんだ!だけど…だけどな!昔も今も、凛が見てんのはお前だけなんだよ!…ハァ・・ハァ・・」


「塁……」


「……」



壱は俺を見ない。




「なのに俺が羨ましいだ?お前、俺をバカにしてんのか!?なぁ壱!何か言えよ」


「……」



何も答えない壱。




俺は、涼達の抑えを振り払い、壱を見た。





「凛の気持ち知ってるくせに…何で弱気なんだよ。好きなら、「好き」ってちゃんと言ってやれよ。言えない理由があるなら、その理由もちゃんと話せよ!」


俺の知ってる壱はこんなんじゃない。


「前にも言ったよな?凛は、そんな事でお前を嫌いになるような女じゃないって。俺は、お前なら凛を幸せにしてやれると思ったから凛とお前を応援してんだ」


もうこんな壱は見たくない。

だから…。


「だからこれ以上、俺の気持ち、無駄にすんなよ」





俺はその場を立ち去った。


周りはいつの間にか、男子生徒だらけだった。




「お、おい綾瀬!どこ行くんだ!まだ授業中だぞ!」


「トイレです」





壱は、俺の親友だから。

だから、弱気なアイツは許せない。


凛を傷つけたアイツも許せない。

だから、俺が目を冷まさせないと。




だから俺は、アイツを殴った。




殴った手が、まだジンジンいっている。




「いてーよ……壱」







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