約束-promise memory-





「壱、悪い…昨日殴ったりして」


「なんだよ。そんな顔するなって」


「同情じゃないぞ?」


「ああ。分かってる。俺も、昨日は悪かった」



壱が、笑った。



なんだか俺は、壱との間にある、一つの大きな壁を超えられた気がした。

今までの隙間を埋められた気がした。



壱が照れながら聞いた。




「なぁ塁、俺らってまた一緒に笑えるかな?」


「当たり前だろ。バーカ」




5年。

長かったけど、意外に短かったのかもしれない。

俺と壱はすごい不器用に、難しく考えていたのかもしれない。

話せば分かる。

話し合えば理解出来る。

すぐ分かり合えたかもしれないのに。

俺らは少し遠回りをしたのかもしれない。



ただ、それだけ…それだけの事。





「んじゃ、今日の試合!思いっきり行きますか」


「だな」





俺らは、拳と拳をぶつけ合った。





親友って、そんなもんだろ?

な、壱。








< 182 / 309 >

この作品をシェア

pagetop