約束-promise memory-
-凛 side-
開会式の途中でも、壱と塁は戻って来ない。
「柏木君と塁、戻って来ないね」
茜が心配そうに言ってきた。
「あの2人はたぶん大丈夫だと思う」
「凛がそう言うなら、大丈夫かもね」
私はそう心配ではなかった。
あの2人なら、大丈夫。
自然にそう思えるから。
「だけど凛、今日、柏木君に呼び出されてるんでしょ?朝、そう話してなかったっけ?」
「うん、そうなの」
「え?そうなの」
涼は心配そうに私に聞いてきた。
「でも大丈夫だよ?私に、全部話してくれるって言ったの」
「全部って?」
新の落ち着きのある声。
「それは分からない。今は何も聞かないでほしいって言われたから、私も何も聞いてないの」
「凛、もう何もかも受け入れる覚悟はしてるんだ?」
新の質問に、私はただ頷いた。
「よし!凛々!何か耐えきれなくなったら、俺の胸でいくらでも泣いていいからな!」
「涼、ありがとう。だけど涼の胸は、茜に譲るよ」
「……」
「……」
「ちょ!凛!」
「凛々!」
私と新は、顔を見合わせて笑った。
大丈夫。
私、ちゃんと笑えるから。
もう大丈夫。
気付かない間に、開会式は終わった。
それと同時に、壱と塁が、朝とはちょっと変わった顔で戻ってきた。
2人の間にあった隙間は、埋められたみたいだね。
あとは、私だね。