約束-promise memory-
「私ね、正直怖いの」
「茜」
「私は凛の親友で、凛の苦しみや悲しみとか、ちょっとでも楽になってほしい。その為には、私は私なりに、凛を元気づけたりしたいの。だけど、それが私に出来るのかなって一瞬考えた時に、ちょっと怖くなる。それが出来なくて、凛の悲しみや苦しみが癒えなかったらどうしよう。楽にならなかったらどうしようって凛は一生、その悲しみから逃れられないのかって」
茜は、外から俺らに視線を移した。
「茜が言いたい事は俺もわかる」
俺にはその気持ち、痛いほどわかる。
「俺はこの5年、ずっと凛をそばで見てきた。俺は、壱が居なくなった日から、凛は俺が守るってずっと決めてきたけど、果たして俺にそれが出来るのかって事だってずっと思ってきた」
でも実際、凛が壱を忘れることはなくて、壱に対する想いが、あいつをずっと苦しめてきた。
俺は5年、何も出来ずに過ごしてきた。
「何の為にあいつのそばに居たんだろう、俺って思ってさ」
「だけどさ」
俺が話し終わった後、ずぐ口を開いたのは、新。
「凛はたまに言ってた。「私は幸せ者だよ」って」
「え?」
「「塁は、私の為にずっと過ごしてきてくれた」とか、「そんな塁には本当は心配かけたくない」とか、凛だって、お前の優しさには感謝してるんだよ」
「俺も凛々が言ってるの聞いたことあるよ」
「「私が今普通に笑えたり出来るのは、塁のおかげかも」って、言ってたときもあった」
「私だって、凛が塁の話をしてるの、何回も聞いてるんだから」
「……そっか。」
「凛が帰ってきたら、笑顔で迎えられるのは、塁と私らしか居ないんだよね」
「そうだよ」
「だな」
「まったくお前ら……」
やっぱり俺が、凛やこいつらに色々と助けられてるかもしれない。
教室には、少し穏やかな空気が漂っていた。