約束-promise memory-
-壱 side-
俺の話を聞いて、ずっと顔を伏せたままの凛。
「凛、頼むから泣きやんでくれ」
父さんの話から、終始泣きっぱなしの凛。
「壱…ごめんなさい。私…私…ッヒック…」
「何で凛が謝るんだよ。謝るのは俺の方だ」
「違う。私も、ヒック…謝らなきゃいけない…」
「凛…」
「壱は壱で、ヒック…ずっとずっと…苦しんできたのに…私は、自分だけが被害者みたいな顔をして……ごめんなさい」
「凛、俺はもう父さんの事は立ち直ったつもりだ。だから、心配しないで。俺はただ、凛にこの真実だけは伝えたかったんだ」
「ありがとう、壱」
「ああ。わかったから、もう泣くなって。な?」
俺は、凛の頭をそっと撫でた。
撫でた瞬間、凛が顔をあげた。
その瞬間俺は、とっさに凛を抱きしめた。
「え?い、壱…」
「少しだけ、このままで居させて」
もう、凛の事を抱きしめることは出来ないんだ。
最後に、愛おしい人の温もりを、忘れないように。