約束-promise memory-





「この前、デートっていうデートじゃなかったからさ」


「あ…うん…そうだったね」



壱のお母さんの病院に行った日も、デートって誘ってくれて…

だけど、「これはデートじゃないな」って二人で笑い合って…

「今度はちゃんと遊べる場所に連れてってやる」って言ってくれた。



それが、今日なんだ。



「どこ、行くの?」


「……秘密」


「え?」


「まぁ、着いてからのお楽しみってやつ?」



塁は、笑いながら私に言った。


私はいつも、この笑顔に救われてきたんだ。

そしていつからか、この塁の笑顔を曇らせるようなことはしたくないって思ったんだ。

だから、壱の事も忘れようって努力したんだ。

そう言えば、壱が居なくなって、壱を忘れられない私を塁はいつも…寂しそうな顔で、見てたっけ。



「なぁ?」


「…へ?」


「俺の顔、何かついてる?さっきから超熱い視線を感じるんだけど?」


「えっえっ!あ、ううん!!何でもないの!!」


「そっ。少し期待した」


「………ご、ごめん」




二人の間に少しだけ、会話がなくなった。








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