約束-promise memory-





-塁 side-



俺は凛との帰り道少し遠回りをして、いつもとは違う道を通った。



「あ…ここ」



すると凛が立ち止まり、その建物を見つめた。



「壱のお母さんの病院…」


「顔、見に行くか?」


「うん!壱とのことも色々あったし、壱のお母さんにも色々と心配掛けたし…それに、壱がちゃんと若菜さんと婚約するって決めたから、壱のお母さんにもおめでとうの一言言いたいよね」


「そうだな」



凛は笑顔でそう言った。


俺は、凛のこういうところが好きだ。


優しくて、思いやりがあって…


でも、本人はそういうのは当たり前だと思っているんだよな。


だから、壱のことも待ち続けて、信じ続けてこれたんだな。


なのに俺は、そんな凛の弱った隙に入りこもうとしてたんだよな…今もだけど。


ほんと、俺ってとことんダメな奴。



「塁!早く!」


「あ、ああ…」



凛の声に気づいて、俺は歩きだした。


でも、今そんな凛が俺の目の前で笑ってくれている。

これからも、俺の目の前で笑っていてほしい。






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