約束-promise memory-





「ありがとうございましたー!」



新は一人、本屋を出た。



「ラッキーだな、あの本が再入荷されてた」


買った本を片手に、新は歩き出した。



"ドンッ"



「きゃ」


「あっ」


「あ!ご、ごめんなさい」


「いや、俺こそごめん…それより大丈夫だった?」


「はい!」


「なら良かった」



新は、さっき買ったばかりの本をぶつかった衝動で、水溜まりに落としてしまっていた。


それに気付く少女。



「あの、ごめんなさい。私のせいで」


「いや、また買えばいいし、気にしないで」



本を拾い、「じゃ」と一言残し、その場を立ち去った。



「……かっこいい」



ここに一人、新たな恋に芽生えた一人の少女。



「もう読めないよなこれ。あ!確かA組の佐藤、この本持ってたよな?明日、貸してほしいって頼んでみるか」



新にはまだまだ、恋の風は来そうにもないようだ。











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