約束-promise memory-
【Memory.6】昔捨てた名前
―――――――
そして今に至る。
「柏木、お前、"壱"なんだな?」
「保科壱は、俺が昔捨てた名前だ」
「捨てた?」
「今は柏木壱だ。保科は昔の名前」
「今さら俺らの前に姿を見せて、何かの冗談?」
「いや、ただこの街が恋しくなったから」
柏木は空を見上げて言った。
「はぁ?ふざけんじゃねーよ。お前、凛の気持ち知ってて来たんだろ?」
「・・・・・・・凛」
何だ?
一瞬、昔のアイツの空気に戻った気が。
「安心して塁、俺は凛に、正体を証す気はないから」
「じゃ何の為に来たんだ」
「自分の為…かな。じゃーな"綾瀬"」
「おい待て!壱!」
なんなんだアイツ。
昔の名前を捨てた?
戻って来たのは自分の為?
何考えてんだ。
凛の気持ち知ってて、凛の目の前に堂々と現れやがって。
俺達を裏切っておいて。