約束-promise memory-
-柏木壱 side-
<職員室>
「柏木、あんまり無理はするなよ?お母さんの面倒とかも大変だろうから」
「俺は大丈夫です。では、失礼します」
"ガラーッ"
職員室を出た俺は、教室に向かった。
"柏木"
これは母さんの旧姓で、俺の今の苗字だ。
5年前までは、"保科壱"
それが俺の名前だった。
小学校6年まで、充実した毎日を送っていたが、小学校卒業式の前日、俺の人生は180度変わった。
絶対裏切ってはいけない、大事な人を裏切ってしまった。
俺は凛を、この5年間1日たりとも忘れた事はなかった。
正確に言えば、今でも大事な人だ。
だけど今の俺は、凛を幸せにしてやれない。
だから、以前の"保科壱"を捨て、"柏木壱"として凛の幸せを見守っていきたい。
それが "凛との約束を破ってしまった自分への償い"
そうする事で、俺は安心する。
凛がちゃんと幸せになってくれれば、俺は。
だけど、それもまた自己満足にしか過ぎないのかもしれない。
結局は自分の為。
自分が凛の幸せを見届ける事で、自分が安心する。
「俺ってほんと、最低だよな。」