約束-promise memory-
"ガラー"
「あっ!壱!来てたの?」
笑顔で俺に近付いて来る女。
「若菜…」
「お父様が、おば様の様子を見てくるように言われたから、来ましたの!おば様、体調はいかが?」
「大丈夫よ若菜さん」
「わざわざありがとう、若菜」
俺は、その若菜という女に頭を下げた。
すると若菜は、俺の腕に自分の腕を絡めた。
「壱、私は当たり前のことをしているのよ?だって大切な人のお母様ですもの」
明るすぎる茶色の髪をクルクル巻きにして、バッチリキメたメイクで俺を見詰めてきた若菜。
「そうだね、若菜」
「ええ」
そんな俺達の姿を、母さんが悲しい笑顔で見ていた。
「じゃ母さん、俺そろそろ帰るよ」
俺は鞄を取り、母さんにそう言った。
「気を付けて帰るのよ?」
「ああ」
「あ!壱待って!ではおば様、私もそろそろ失礼しますね」
「ありがとう若菜さん、気を付けて」
俺は若菜より先に出て、若菜はそんな俺の後を走って追いかけてきた